研究概要 |
1,内外から収集された在来系統,新旧品種および多収系統を含む稲72品種・系統を,滋賀県立短大研究水田にて,窒素無施用(0N区)と慣行施肥(6N区)の2条件で栽培した. 2,到穂日数は66日〜101日,成熟期まで日数は88日〜145日であった.出穂期における草丈には70cmから160cmの変異がみられ,国内の旧品種群と外国の在来系統が新しい品種群に比べて草丈が高かった.止葉のSPAD値(出穂期)にも幅広い変異が観察され(26〜60),特に国内陸稲品種が新旧を問わず高い値を示した. 3,成熟期の全地上部N量(以下Ntop)は4.0〜8.4gm^<-2>(0N区)および4.8〜12.0gm^<-2>(6N区)の幅で変異した.Ntopは外国多収系統,次いで一部の国内新品種が両施肥区を通じて大きかった.一方,地上部全乾物重(DWtop)および籾乾物重(DWg)の変異幅は,それぞれ540〜1620gm^<-2>および180〜870gm^<-2>であり(両施肥区込み),無窒素栽培による平均減収率はそれぞれ17%および19%であった.両施肥区の籾収量の間には密接な相関がみられ(r=0.897),概して慣行条件における高収品種は無窒素施肥条件でも高い生産力を示した.DWgが最も高かったのは外国多収品種群であり,国内の稲では新品種群が旧品種群を上回った.収穫係数(HI)の新旧品種間差異も明らかで,それが生物収量とともに籾収量の品種間差異に関与していた. 4,DWg/Ntopは56〜98g/g(0N区)の範囲であり,概して高いHIを有する内外の新品種が優れた.しかしDWtop/Ntop(地上部N濃度の逆数)では逆に内外の旧品種が新品種よりも高い傾向があった.個々の品種を検討すると,無窒素施肥条件によるNtopの低下に対する籾収量の低下が特徴的に小さい品種がいくつか見いだされた.これらは著しい低窒素供給条件でも生産力を維持する特性を有するものと評価される.
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