本研究は、本研究代表者らがこれまで行ってきた、植物工場や養液栽培に関するハード、ソグト両面の知見をベースに、工場的生産施設における照明方法を革新して経営収支を大幅に改善することを目的としたものである。 これまで、植物工場における照明方法については、主として光強度、照明時間について試験研究が進められており、本研究代表者らも深夜あるいは夜間帯電力を前提とした短時間強光度照明による経済的な栽培方法を提案している。一方、現在稼働中の植物工場では、24時間の照明サイクルの内10〜16時間の連続照明を行っているのが一般的であるが、完全制御型の植物工場は、24時間の照明サイクルから解放され得る要素を備える初めての栽培システムである。照明サイクルに関しても、ミリ秒単位から秒、分、時間単位までの光周期が試験・検討されているが、いずれの場合にも好結果は得られていない。これは、これまでの試験が、明期と暗期の比率を変えないで光周期のみを変化させてたことに関係あると思われた。そこで本研究では、明期時間は同じで、暗期時間だけを変化させることにより光周期を時間単位で変えた照射サイクルに注目した試験を行った。その結果、レタス苗のを用いた試験では、暗期時間を短くしても1明期当たりの苗の生長量は有意に減少しなかった。これは生理的には、2時間の暗期で光合成産物の同化転流が完了したためと考察した。このことは、10時間明期の場合、16時間暗期で24時間周期とした試験区と比較して、24時間暗期で12時間周期とした試験区では、同じ収穫物を得るのに電力消費量はほぼ同じであるが、収穫所要日数は、1/2に短縮できることを意味している。生産コストに占める施設の償却費の比率が極めて高い植物工場では、絶対的な生育速度の向上の持つ意義は極めて大きい。今後は、繰り返し試験を行い再現性の確認とともに、明期時間を変えた場合についてもさらに研究を行う必要がある。
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