研究概要 |
本研究では、(1)DIBA法を用いて、ユリ(‘エンチャントメント'、‘カサブランカ'、テッポウユリ‘ひのもと')のウイルス(LSV,TBV-L(チューリップブレーキングウイルスユリ系),CMV)の調査、(2)茎頂は乳白色をしており、解剖顕微鏡の下でそれを摘出するのが困難であるので、摘出するさいに食紅(染色液)を利用することにより摘出が容易になるかどうか、(3)ウイルスフリー球と保毒球のほ場での生長の比較、を行った。 (1)‘エンチャントメント'、‘カサブランカ'、‘ひのもと'カサブランカの子球からの茎頂の摘出(茎頂培養とよぶ)やりん片培養10〜20日後に再生してくる不定芽を摘出(不定芽培養とよぶ)するさいに染色液を使ったところ、いずれのユリでもいずれの摘出方法においても染色液を使うことにより、摘出した茎頂の活着数率は増加し、枯死数および汚染個体数は減少した。染色液の利用の有効性が証明された。 (2)上述のユリで、2または3種類のウイルスを保毒している子球の茎頂、またはりん片培養の不定芽を摘出して培養した。その結果、‘エンチャントメント'では不定芽培養でフリー球がよく得られたが、他のユリでは両者の摘出方法でのフリー球生産率に大きな差はなく、50〜100%の範囲であった。各種類のウイルス除去の難易性は各ユリごとに異なり、明確な傾向はみられなかった。が、TBV-Lはやや除去率が高いと思われたが、反応強度(ウイルス力値)との関係もあり、今後検討を必要とする。 (3)‘ひのもと'、‘ルレーブ'、‘アビヨン'の子球のウイルスフリーおよび保毒子球を育苗箱に植えてその生長を比較した。各子球の成長率は2〜4倍であり、フリー球と保毒球との生長率の差が顕著な品種は‘ひのもと'で、フリー球の生長がよく、‘ルレーブ'、‘アビヨン'ではあまり差がなく、‘アビヨン'では感染球のほうの生長がよかった。ウイルスの子球生長への影響は品種により異なることがわかり、この点は今後詳しく調査する必要がある。
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