3年間の研究計画の初年度として国立公園の地域制を中心に日本を比較した。日本の国立公園の特色は民有地を含んで指定されている地域制であるが、アメリカにおいてもこの「地域制」を採用しているニューヨーク州のアディロンダック公園についてその成立や展開について文献調査を進めた。その結果、アディロンダックおよびアメリカの国立公園システムにおける地域制の扱いかたについて新たな知見を得ることができた。たとえば、民有地を含む公園はアメリカでも19世紀末に設置されたが、実際の土地利用規制を含むゾーニングは1960年代に始まることが明らかになった。 一方、日本の国立公園史に関しては環境庁に保管されている関連資料のデータベースを作成した。現在これを用いてそれらの内容を調査することにより日本の国立公園の成立過程とそのアメリカの影響を特に地域制の採用過程に留意しながら分析を進めている。これまでのところ、日本の土地所有の実情に合せるために都市計画法のゾーニング手法を援用して国立公園内に特別地域を定めたが、実際に補償するための予算が確保されていないため現実としてはあまり機能しなかったことが明らかになった 上述したアメリカの地域制の公園に関する論文をすでにまとめ日本造園学会に投稿し、現在は印刷中である。日本の国立公園の成立過程に関する研究は、今年8月にフィンランドで開催される国際林学研究組織連合会議で発表すべく執筆を進めている。
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