最終年度として、平成6年度に研究を進めた日米の国立公園の比較と平成7年度におこなった自然環境保全制度の比較を踏まえて、データを補足しながら一層詳細な調査をすすめ成果を公表した。特に、国立公園が日本で設置される際に、基本的に土地を国家が所有するというアメリカ型のいわゆる営造物の形態は日本では採用困難であるため、イタリアの類似した制度や日本の森林法、都市計画法、史跡名勝天然記念物保護法などのゾーニングによる規制が採用されたが、国有林の存在ととそこでの施業が国立公園としてのゾーニングに大きな影響を及ぼしたことを明らかにした。 アメリカのウィルダネス法の日本の自然環境保全法におよぼした影響に関しては、ウィルダネス法が無動力のレクリエーション空間としての認識をベースにウィルダネスをとらえているのに対して、日本では生態学などをベースとした生態系保全という科学的な役割を主目的として自然環境保全法が制定されたことが明らかになった。これは国立公園が利用優先と認識され、保全中心の保護地域が求められた結果であるが、このため日本では自然環境保全法で指定された空間の認識が薄く、支持を得られない状況となっている。また、アメリカの国立公園やウィルダネスにおいては自然環境における文化的価値が認識されているのに対して、日本では植生などの自然中心に評価が偏り、長期間人為が加わって形成された自然環境であるという認識が薄い。これは特に保護中心の自然環境保全法の指定地域で顕著となり国民に存在が認識されない状況になっている。
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