研究概要 |
園芸作業はリハビリテーションの一つとして利用されているが,その体系付けは行われていない。本研究ではこれら作業の,運動としての強さ(運動強度)を明らかに,その運動によってどのように身体機能が強化されるかを探ろうとするものである。 1.園芸作業の運動強度:身体機能の強化や衰退防止に対する園芸作業の効果を明らかにするうえでは,まず運動強度を調査する必要がある。本研究ではまず,心拍数を指標として運動強度を調べた。その算出は次の式に基づいた。 運動強度(%)=作業時心拍数-安静時心拍数/最高心拍数-安静時心拍数×100 これは,安静時の運動強度を0,最高心拍数を示すときの運動強度を100%として表示するものである。 この結果,連続的クワ打ち作業の運動強度は80-90%で,階段の上り下りに匹敵した。鉢の移動,球根掘り,生け垣の刈り込みなどは50-40%台であり,通常の歩行とほぼ同じであった。また,小さな草取り,球根植え,ホ-スでの水かけは30%台で,炊事とほぼ同じ程度であった。このように,多くの園芸作業は運動としては歩行よりも軽い部類に入り,皮下脂肪の消費や廃用性萎縮の防止に効果的であることが示唆されるとともに,体力をもたない幼児や高齢者にも楽しめる活動であることがわかる。 2.園芸作業による身体機能の強化:クワ打ち(運動強度80-90%)作業を1日1回4-5分程度,ほぼ3ケ月にわたって行い,握力と背筋力に対する効果を調べた。握力にはあまり変化が認められなかったが,実験開始前120kgであった背筋力が,3ケ月後には153kgを超え,およそ5%も強化された。この結果からスポーツ代わりに機能強化に使える作業もあることがわかる。しかし,運動強度のあまり大きくない園芸作業の場合には,それらがどの部位にどの程度の負荷をもたらしているかが,心拍数では必ずしも的確には把握できないので,測定法とその指標についての検討が必要である。
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