本研究は、畦畔草地が持っている景観構成や生物種の多様性維持機能に関して、畦畔草地の今日的役割を評価して、適正な管理手法を示すことを目的とした。 1.畦畔草地の現状把握と広域的比較:各地の畦畔の植生調査を行い、植物種類組成を比較した。各地ともに様々な型の植生が存在したが、それらは地域固有ではなく、他の地域にも類似性の高い植生が見られることから、地域内における多様な農業の存在が、畦畔草地の多様化、ひいては生物群集の多様性を維持しているといえる。 2.畦畔の環境測定として、温度、光量子の継続的測定を行った。優占種であるチガヤ、ススキ等の繁茂に従って、群落内の地上付近への光の到達量は、次第に少なくなるが、最大繁茂期の8月から10月においても相対照度20%程度であり、群落内への新規実生の侵入が光条件によって制限されるとは考えられない。 3.畦畔草地の現存量の季節変化と、刈取り後の再成長量の測定:兵庫県今田町の山間部の伝統的な刈取り管理が行われている水田畦畔において、1m^2の調査枠を設定し、5月から12月まで現存量調査を行った。8月には生育期間中の最大現存量である200g・m^<-2>に達した。刈取り後の再成長速度は、6月、7月が比較的大きく20g・m^<-2>で以後次第に減少し、夏植物の生育期間の初期の段階での再生力が大きかった。 4.草地の刈取り管理に関する現地試験:毎月1度刈取り区、隔月刈取り区、年1回刈取り区(4月から10月までの刈取り)、無刈取り区を設けて、群落高、各出現植物の生育高および被度を調査した。その結果、群落高を低く保つためには、少なくとも隔月に刈り取る必要がある。 5.植生管理:畦畔の植生を在来野草で、造成するための方法や植生管理の指針について取りまとめた。
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