特殊緑化空間(屋上緑化部)における野生の生き物に関する生息調査は、東京都および横浜市において選定した建築物の7階〜10階に位置する屋上緑化部を対象に、昆虫類については4箇所、鳥類については7箇所において、平成6年5月〜平成7年1月を中心に実施した。その結果、昆虫類については、見つけ取り法で8目19科301個体、ベイトトラップ法で1目2科30個体を確認した。確認された昆虫類の多くは、鱗翅目や蜻蛉目など比較的飛翔能力を有する昆虫類が中心であり、通常地上でみられるような地表性の腐肉食性・糞食性昆虫類は、自然性の高い1箇所を除いて生息を確認できず、生態系の単純化が認められた。また、調査を通して、除草、殺虫剤散布による管理や限られた植栽樹種等が、昆虫類の生息に影響を与えていることも把握された。さらに、ミカンの鉢植による誘引法では、全ての調査地において、アゲハチョウが飛来・産卵したことにより、このような昆虫の生息を見込んだ植栽計画の重要性が指摘される。つぎに、鳥類については、ドバト、スズメ、ヒヨドリ等のいわゆる「都市鳥」を中心に、プロットセンサス法により3目11科13種2、124個体が確認された。特に、ドバトやスズメの出現率が高く、単純な鳥相が構成されているものの、13種中10種は採餌行動がみられ、屋上緑化部を生息空間の一部として利用していることが把握された。また、個体数の多かった7種について屋上での利用場所をみると、樹木を中心とした4種、草地・裸地を中心とした1種、全てを利用した1種および人工構造物を中心とした1種に大別され、樹木や芝生等による緑化が、鳥類の生息拡大にあたって有効であることが指摘される。今後、さらに壁面緑化部における生息調査や周辺緑地間との移動等について調査することにより、特殊緑化空間と野生の生き物の生息について、多角的な視点からの検討が可能になるものと考える。
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