研究概要 |
平成6年度に開発された本菌(Phytophthora megasperma f.sp.glycinea:Pmg)の遊走子大量形成法によって、無傷でダイズ本葉に接種することが可能になり、その感染葉からde Witらの方法を踏襲して細胞間液を回収し、そのエリシター活性を調べた。Pmg race1の遊走子をダイズ葉に接種すると、親和性の関係にあるHarosoyでは、病斑が葉全体に広がるのに対し、非親和性の関係にあるHarosoy63では、病斑が接種部位に限定され、その部分には過敏感細胞死と思われる壊死が形成される。この壊死誘導活性をマーカーとして、疫病菌感染葉(Harosoy)から細胞間液を回収し、健全ダイズ葉にシリンジで組織内浸透させたところ、Harosoyでは顕著な反応を示さず、Harosoy63のみに壊死を誘導する活性画分が得られた。一方、従来知られている本菌のグルカン・エリシターにはいずれのダイズ品種葉にも、壊死を誘導する活性が認められず、今回の感染葉細胞間液中の壊死誘導物質はグルカン・エリシターとは異なる新しいエリシターであると思われ、この点についての報告を日本植物病理学会において行った。さらに従来から知られているグルカン・エリシターについては、Pmgの菌糸細胞壁表面に存在するグルカンがb-1,3-endoglucanaseによって、どのようにエリシターとして遊離されてくるのかを構造的モデルとして明らかにし、Plant Physiologyに発表した。また、当初の研究計画の中で予定していた、ダイズ疫病菌内で働くプロモーターの探索、ダイズ疫病菌形質転換系の確立、ダイズ疫病菌Gene Libraryの作成については、これら実験系の鍵となるプロモーターの探索が予想以上に困難を究め、現在他方面からのアプローチを検討中である。
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