研究概要 |
当初の研究計画の中で予定していた、ダイズ疫病菌内で働くプロモーターの探索、ダイズ疫病菌形質転換系の確立、ダイズ疫病菌Gene Libraryの作成については、これら実験系の鍵となるプロモーターの探索が予想以上に困難を極め、また、本研究の最終的な目的であるダイズ疫病菌のもつ非病原性遺伝子を単離することについても共同研究者の急逝など、諸々の事情によりその目的を達成することが出来なかった。しかしながら、前年度において明らかになったグルカン・エリシター(RE)についての新しい知見、すなわち、高いエリシター活性が認められるREは、β-1,3およびβ-1,6のみの結合からなっていること、このREはEGによる再処理でもエリシター活性を失わず、またexoglucanase処理によりその活性を失うことから、REの主要鎖はβ-16,結合であり、BGにより分解されない1ないし2残基のβ-1,3結合の側鎖が存在すること、そしてその側鎖がエリシター活性に重要であることなどのデータをふまえて、さらにそのREを認識する植物側の因子の探索について検討を加えた。その結果、REが結合すると思われるグルカンエリシター・レセプタータンパク質の単離に成功し、それをProc.Natl.Acad.Sci.に発表することができた。このことにより、非病原性遺伝子の産物に代表されるような病原菌側の情報と、それを認識して抵抗性の発現にまで至る植物側の要因との関わり合いがより一層明確になってくるものと思われ、「植物-植物病原菌の特異性」の解明に大きく貢献するものと思われる。
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