植物ウイルスはそれぞれ独自の宿主域を持つが、何故、あるウイルスが特定の植物にだけ感染できるのかは、植物ウイルス学の重要なテーマの一つである、本研究では、種々の落葉性果樹類の重要な病原ウイルスであるリンゴクロロティックリーフスポットウイルス(ASGV)とリンゴステムグルービングウイルス(ASGV)を材料として用い、植物ウイルスゲノムがコードしているORF2タンパク質(細胞間移行タンパク質)が、植物ウイルスの宿主域を決定する主要な因子であるかどうかを明らかにする。平成6年度の研究概要は以下のとおりである。 ACLSVゲノムのORF2領域に相当するcDNAを大腸菌の発現ベクター(pKK223-2)に組み込み、ORF2タンパク質を大腸菌で大量に発現させた。このORF2タンパク質を精製後、家兎に免疫し、ORF2タンパク質に対する抗体を作製した。 ACLSV感染Chenopodium quinoa葉の磨砕液を細胞分画法で、細胞壁画分、細胞膜画分、可溶性画分に分画後、作製した抗ORF2タンパク質血清を用いたウエスタンブロット法によりORF2タンパク質の細胞内所在を調べたところ、ORF2タンパク質は細胞壁画分と膜画分で検出された。また感染葉から検出されるORF2タンパク質は、アミノ酸配列から予想されるサイズ(50キロダルトン)より大きなタンパク質として検出され、感染細胞内で翻訳後にリン酸化されることが明らかになった。
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