研究概要 |
研究I:キチナーゼ遺伝子導入によるバイオコントロール・エージェントの作出 Alteromonas sp.由来のキチナーゼ活性DNA断片(chi:12kbp)を挿入したpBR322(chiI-pBR322)をエレクトロポレーション法でErwinia ananas L2株に導入した結果、3個のキチナーゼ・ポジティブクローン(chiI-pBR322/L2-1,2,3)が得られた。これらのクローンは、chiI-pBR322を導入したE.coli chi-DH5に比べてキチナーゼ活性が強く、in vitro試験では供試したBotrytis属菌およびB.cinereaの薬剤耐性菌に対して強い抑制効果を示した。しかし、これらのクローンは継代中にchiプラスミドを脱落しやすく、活性発現が不安定であることから、エージェントとして不適当であった。そこで、安定したクローンを得るためにchi断片(12kbp)を挿入したカナマイシン耐性マーカーを持つpHSG299およびp22-k2を構築し、デリーションクローンを作製した結果、4個のポジティブクローン〔chiβ10(4.3kb)-pHSG299/L2,chiβ10(4.3kb)-p22-K2/L2,chiα(3.5kb)-pHSG299/L2,chiα(3.5kb)-p22-k2/L2〕が得られた。これらのクローンは継代中にchiプラスミドの脱落が起こらず、安定したキチナーゼ活性を示した。現在、これらの抗菌活性を検定中である。 研究II:Serratia marcescens B2 によるバイオコントロール 通常のシクラメン栽培条件下で、灰色かび病に対するS.marcescens B2菌の抑制効果とその機構について調べた。B2菌処理区で発病指数は無処理区の約40%に低下し、イプロジオン(200ppm)処理区と同等の抑制効果を示した。B2菌処理区におけるB.cinereaの感染過程を観察した結果、胞子発芽の著しい低下がみられ、発病指数と負の相関が認められた。また、B2菌のシクラメンにおける定着密度を調べた結果、本病が最も発生しやすい葉柄基部付近では処理5週間後に1×10^8cfu/ml以上の密度で検出され、B2菌がシクラメン株内で定着可能なことが示唆された。
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