本年度は本研究計画の2年目にあたる。まず、前年度に引き続いてPseudomonas syringae群細菌の遺伝子ライブラリーの製作を継続して行った。その結果、P. s. syringae、 P. s. actinidiaeについてもライブラリーを作成することに成功した。これらのライブラリーより、hrp相同領域を含むクローンを前年度拾い上げたが、その両側にウォーキングを行ってさらに連続した区間のクローンを得、順番に並べて整列化するとともに、全体の地図を作成した。その結果、約120kbにおよぶ長大な領域にわたって地図を作成することに成功した。さらに、それぞれのクローンの間の相同領域は従来知られていたhrp領域のさらに左右に10数kbにわたって続いており各病原型間でよく保存されているが、その外側には菌種間に違いのある領域が存在することがわかった。phaseolotoxin生産遺伝子については、P. s. glycineaより左右の境界領域をもつクローンが得られ、約40kbにわたる地図を作成し、pv. phaseolicolaのそれと比較した結果、やはり両側はつながっているが、その間に存在する領域は約12kbの長さであり、この領域はpv. phaseolicolaとは相同性がないことを明らかにした。しかし、PCRやパルスフィールド電気永動を用いたクローンの並べ替えは条件設定が解明できず、成果をうるにいたっていない。よって、この2年間で必ずしも予想どうりではなかったが、このように長大な領域のクローンの整列化とマッピングを行い、菌種間の違いを大きな領域の並び方のレベルで明らかにするという大きな成果を得ることができた。
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