研究概要 |
平成6年度までにササゲクロロティックモトルブロモウイルス(CCMV)の接種葉における移行を調べるためのアッセイ系が確立できたので、本年度はその系を用いて各種変異体ウイルスの移行を繰り返し実験によって解析し、各遺伝子の移行における役割を推定した。一方、そのような実験系と並列して、最近とくに注目を集め始めているGreen Fluorescent Protein(GFP)遺伝子をレポーター遺伝子として用い、ウイルスの移行を解析する系の確立を新たにめざした。1.In situ hybridization法を用いた変異体ウイルスの解析において多量の試料を観察し、ウイルスの細胞間移行を定量化し、各種ウイルスの接種ササゲ葉の裏表皮における移行性についてデータをまとめ上げた。その結果、3a遺伝子変異体が一細胞に局在することが示され、3a遺伝子がウイルスの細胞間移行に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、3a遺伝子をブロムモザイクブロモウイルス(BMV)の3a遺伝子で置換されたCCMVは、数細胞移行した後に移行を停止したことから、このようなキメラウイルスの移行は宿主植物の何らかの反応によって阻止されていることが示唆された。2.外被蛋白質遺伝子の欠損変異体について、その移行が接種葉内部のどの組織で停止しているかを解析するため、マーカー遺伝子を用いた変異体ウイルスの解析系の確立を試みた。外被蛋白質遺伝子やポリメラーゼ遺伝子の部分領域等をGFP遺伝子で置換した変異ウイルスあるいはGFP遺伝子とBMV,CCMVのサブゲノムプロモーターの遺伝子カセットをCCMV RNA3の種々の領域に挿入した変異ウイルスを作製した。これらの変異体RNAをササゲ葉に接種後、経時的に葉に紫外線を照射し、GFPの検出を試みた結果、いずれの接種区においても変異体ウイルスの存在を示す緑色の蛍光は、観察されなかった。今後はさらに、GFP遺伝子をウイルス遺伝子と融合した変異体ウイルスについても検討していく予定である。
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