1.黒すす病菌の宿主特異的毒素の単離と構造決定 黒すす病菌の宿主特異的毒素(以下AB毒素と省略)は胞子発芽液中に生成・放出された。AB毒素は分子量5000以下の低分子で、酸性下では発芽液より酢酸エチルやクロロホルム相に移行し、メタノールに可溶であった。TLCで分画後、逆相HPLCにより毒素画分を単一のピークとして単離できた。現在、さらに高純度の毒素画分を得るためのHPLCの条件等を検討中で、今後、UV、IR、NMR、MSなどによる毒素構造の決定を行う予定である。 2.アラビドプシスにおける宿主特異的毒素の特異性決定機構 黒すす病菌はアブラナ科野菜(ナタネ、キャベツなど)の病原菌であるが、胞子接種試験ではアブラナ科植物のアラビドプシスにも病原性を示した。そこで、AB毒素をアラビドプシスに処理した結果、従来の宿主特異的毒素とは異なり細胞壊死は誘起されなかったが、実生根伸長阻害活性や非病原菌胞子の感染誘発活性が顕著に認められた。他の宿主特異的毒素では、毒素の宿主細胞膜作用と感染誘発活性との関係が明らかとなっているので、現在、アラビドプシスの細胞膜に対するAB毒素の作用に焦点をあてて実験を進行中である。また、アラビドプシスにおける黒すす病感受性遺伝子解析のため、感受性種子へのX線やEMSの処理による突然変異体の作出と、黒すす病菌接種およびAB毒素処理による抵抗性(毒素耐性)変異体のスクリーニングを実施中である。
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