(1)熊本県大津町の放飼園における調査 前年に引き続き上記の放飼園の8本のサンプル樹から、5月29日、7月11日、8月11日、9月26日の4回にわたって毎回樹当たり約50個のゴールを採集し、解剖調査と羽化調査を行った。その結果チュウゴクオナガコバチとクリマモリオナガコバチの合計寄生率は27.8%であった。1月17日に同園のサンプル樹とは別の調査樹12本から採集した635個の乾枯ゴール(前年春形成)から羽化した両者の個体数はそれぞれ52頭(雌24、雄28)と1頭(雄)であったことから、この合計寄生率の値はほとんどチュウゴクオガコバチによるものと考えられる。その他の寄生蜂の合計寄生率は17.7%であったが、その中ではキイロカタビロコバチ、タマヤドリカタビロコバチ、オオモンオナガコバチ、クリノタカラモンオナガコバチが多く、そのほか5種が一次寄生者として確認された。チュウゴクオナガコバチ終齢幼虫の生存率は、5月29日94.5%、7月11日72.9%、8月11日21.6%、9月26日14.9%であった。死亡要因のほとんどは随意的高次寄生者の二次寄生によるもと推察され、クリタマオナガコバチ、タマヤドリカタビロコバチ、トゲアシカタビロコバチ及びクリタマヒメナガコバチが二次寄生者としても発育することが確認された。 (2)茨城県における調査 前年に引き続き、新治郡出島村西成井、同郡千代田町稲吉、東茨城郡美野里町江戸の3か所のクリ園で、6月5日と11月13日にゴールをサンプリングし、解剖調査と羽化調査を行った。その結果チュウゴクオナガコバチの寄生率は78.1〜84.0%で熊本に比べて著しく高く、その他の寄生蜂の合計寄生率は3.3〜4.5%であった。チュウゴクオナガコバチ終齢幼虫の生存率は、6月5日96.7〜98.5%、11月13日34.7〜60.4%であった。これらのことから、熊本におけるチュウゴクオナガコバチの増殖遅延の重要な原因の一つは、随意的高次寄生者の二次寄生による終齢幼虫期の高い死亡であると推察された。
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