宿主としてタバコ(品種 Xanthi)を使用し、キュウリモザイクウイルス(CMV、pepo系統)のゲノムRNAにCMV-RNA4を種々の濃度で加えて接種した場合の接種葉中の総CMV-RNA量、各RNA成分量、CP量を継時的に追跡した。葉組織中のウイルス一本鎖RNA成分の検出はCMVの二本鎖RNAをプローブとしたノーザン法によった。まず、接種葉中における感染性から推定される総ウイルスRNA量とCP産生量を継時的に分析したところ、接種源中のRNA4の濃度により感染初期のRNA産生量に大きな差が現れた。注目されるのは感染の初期過程でのCP産生量には差が認められないことで、RNA産生量の差はCPの蓄積量に起因しないことが明らかになった。そこで、感染組織中のRNA1、2に対するRNA3、4の産生比率を継時的に調査した結果、感染初期には接種源中のRNA4濃度が低い場合の方が高くなったが、感染後期では接種源中のRNA4濃度が高い場合の方が高くなった。一方、同一の接種条件で、産生されるCMV粒子中に含まれるRNA成分を分析したところ、感染組織中のRNA1、2に対するRNA3、4の産生比率が高いとウイルス粒子中のRNA3、4の比率は低く、感染組織中のRNA1、2に対するRNA3、4の産生比率が低いとウイルス粒子中のRNA3、4の比率が高くなった。ウイルス粒子の内外でRNA1、2とRNA3、4の比率が逆転する仕組みについては明らかでないが、これによってウイルス自身の増殖量の周期的調節を行っている可能性が考えられる。以上の結果から、CMVの初期複製と干渉の成立にはCPは関与せず、ウイルスRNAが重要な役割を果している可能性が示唆された。今後は、接種源中のRNA3、4の比率を変化させて、より精密な実験を行う予定である。
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