研究概要 |
クローバ葉脈黄化ウイルス(CYVV)及び、同ウイルスに血清学的に近縁で通常のポリクローナル抗体では類別が困難な、インゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)について、CYVVのエピトープ解析に基づいて、CYVV-NFU株外被タンパク質N末端領域のエピトープを5種検出した。これらのうち、CYVVとBYMVに共通と考えられたエピトープI、さらに、CYVVに特異的と考えられたエピトープIIIのペプチド抗体の作製を試みた。エピトープIに対する合成ペプチドは、現在までのところ、ELISA,ウエスタンブロット法、免疫電子顕微鏡法など複数の血清学的手法で、CYVVおよびBYMVの検出が可能で、他のPotyvirusとの反応はなかった。また、健全成分との非特異反応もなく、良好な結果が得られた。さらに、モノクローナル抗体が結合するエピトープが、SPOT法で容易に検出できることを、アメリカンタイプカルチュアコレクションから得たモノクローナル抗体を用いて、確かめた。以上より、SPOT法を利用したエピトープ検出とペプチド抗体の作製が植物ウイルスでも有用であることが示された。 本ウイルスについてのペプチド抗体作製の可能性が示されたため、前年度、合成ペプチドを作製しエピトープと考えられた、N-QKSKDKESRQ-C領域について、再度、抗体の作製を試みた。しかし、2羽の兎を免疫を行ったものの、両個体とも十分な力価の上昇を示さず、実用上利用可能な抗体は得られなかった。したがって、SPOT法ではエピトープとして認識されるペプチドであっても、抗原として利用できない場合、あるいは、ウイルス検出に不適な場合があることが考えられ、今後、これらの問題がペプチドの修飾によって解決するかを検討する必要もあると思われた。
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