研究概要 |
トマト萎ちょう病菌F.oxysporum f.sp lycopersici race2を用い,変異原処理により病原性が弱い弱病原性変異株OW932を作出した。変異株について、SDS-PAGEによる総タンパクの分析および等電点電気泳動と活性染色によるポリガラクツロナーゼ(PG)活性について調べた結果,変異株OW932にはPGのバンドが殆ど見られず、原菌との間に大きな差が認められた。これらの事実から,本菌が産生するPGが重要な病原性因子であると推定されたので,本酵素について生化学的研究を行った。 本菌の産生するPGの性状について調べた結果,PGはシトラスペクチンおよびポリガラクツロン酸でのみ誘導され、ペクチン濃度は1.0〜2.0%が最適で、静地培養では30〜40日目に活性が最大になることが判明した。また,本酵素を硫安分画,イオン交換,およびゲル瀘過により精製を行った結果,非変性条件PAGEでは単一のバンドを示したが,SDS-PAGEおよび等電点電気泳動では4つのアイソザイムのバンドを示した。さらに,いずれのアイソザイムにも糖鎖が結合していることが確認された。 PGの発病における役割を解明するため植物組織内の病原菌PGの分布を精製PG抗血清を用いて調べた結果萎凋病感染組織内の維管束部においてのみPG反応が検出された。このことから,トマト植物の維管束壁部分がトマト萎凋病菌が産生するPGにより溶解されることが萎凋症状の一因であると考えられた。
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