本研究は、アグロバクテリウムと発芽種子との共存培養系による方法および接木による遺伝子導入系による方法をもちいてクワにおける簡便な遺伝子導入系の確立を目的とした。 接木による遺伝子導入の可能性を検討するため、まず適した諸形質を持つ材料の選定を行うこととした。日本におけるクワ品種の形態的変異に加え遺伝子変異を調べるためにRAPD分析を行い、品種評価分類を試みた。その結果、従来の分類法では形態やタンパク質成分と系統群との関係がみられず、また本研究の葉の全タンパク質の分析でも系統性は認められなかったが、PCRによるDNA分子多型により3つのクワ品種群、ヤマグワ系、ログワ系、カラヤマグワ系に対応する群が認められた。こうしたことにより、形態形質マーカーとDNA分子マーカーの利用可能性が確認された(本間 慎)。 これをもとに、接木により作成されたと言われている品種のDNA多型分析を行った。「魯桑」に「十文字」を反復接木して育成された「利桑」を調べたところ、育成品種に穂木品種と台木品種とのDNA断片が認められるなどの結果が得られた。さらに、実際に「剣持」に「国桑13号」を接木し、穂木「国桑13号」に認められた(平田 豊)。 こうしたことにより、従来より、木本植物で用いられている、接木でも、遺伝的変異の誘導や導入が可能と考えられるので今後さらに、詳細な研究が期待される。また、木本植物の遺伝子導入系のモデルとして、クワを再評価し、利用できる可能性も示された。
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