染色体観察材料を取得するために、1994年3月、予定どおり本学部附属農場保有のクワ品種見本園より採穂した改良鼠返ほか9品種について、4月に挿木を実施した。その結果、剣持、露八、扶桑丸、甲撰、十島の5品種の挿木発根苗を得たが、発根率は3%から59.2%で、品種により差がみられた。取得した挿木苗は素焼鉢に移植して栽培したが、根端組織を採取するには至らず、現在も次年にむけて管理中である。 根端組織が採取できなかったため、経営桑園で栽培されている一ノ瀬の5葉期新梢より頂芽から第10芽までを、9時より11時まで1時間おきにFAAで固定し、酵素によるクワ新梢芽組織における細胞壁の消化方法と、AgNO_3およびGiemsaの処理条件について検討した。また、頂芽内の組織を生長円錐体とその直下、托葉と葉の原基に分けて中期の発生頻度とその様態を把握しようとした。その結果、1-2mmの葉原基組織を用いた場合、4%Cellulase ONOZUKAR-10+4%Pecolyase Y-23 90分処理でほぼ染色体の裸出が可能であった。また、Ag-I法における処理条件のうち、AgNO_3は30%、55℃約10分、Geimsa液は4%約10秒でコントラストの良い像が得られる可能性がある。また、生長円錐体とその直下および托葉の各組織においては中期が全くみられなかった。 Ag-I法により観察された一ノ瀬葉原基組織の最大染色体は4.46μmで、最小は0.99μmであった。最大染色体のNo.1および2の所謂M染色体長は4.46μm、3.76μmであり、発生したバンドの位置は非相同であった。
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