研究概要 |
家蚕に感染性の微胞子虫Nosema bombycisのDNAをpolymerase chain reaction(PCR)法により特異的に増幅させる実験を行った。プライマーはNosema bombycisのリボソーム小亞粒子リボ核酸(SSrRNA)の疑似遺伝子と思われるDNAの塩基配列をもとに設計した。鋳型DNAは胞子より抽出した。用いた微胞子虫は,Nosema bombycis 2株,Nosema sp.1株Vairimorpha sp.1株,Pleistophora sp.1株の計5株で,いずれも,家蚕に感染する。N.bombycis 2株は基準株及びスジキリヨトウ(Spodoptera depravata)由来の分離株である。その結果,このプライマーは基準株N.bombycis胞子のDNAを増殖したが,残りの4株の微胞子虫のDNAを鋳型としたときは,増幅産物を作らなかった。 基準株のN.bombycisを感染させた家蚕-蛹及び蛾-から抽出したDNAを鋳型にして,上記のプライマーを使ってPCRを行ったところ,増幅産物が得られたが,スジキリヨトウ由来の分離株に感染させた蚕及び非感染蚕から抽出したDNAは増幅されなかった。設計したプライマーは家蚕のDNAを夾雑物として含む試料からでもN.bombycis基準株のDNAを増幅できることが分かった。 また,Vairimorpha necatrixのSSrRNAの塩基配列をもとに設計したプライマーは,供試した5種の微胞子虫の胞子より抽出したDNA全てを鋳型としてPCR産物を作った。 即ち,実験系は機能しており,今回N.bombycisのSSrRNAの疑似遺伝子を基に設計したプライマーは基準株のN.bombycisのDNAのみ増幅し,スジキリヨトウ由来の分離株のDNAを含む他の4株の微胞子虫及び家蚕のDNAを鋳型としなことが明らかとなった。
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