研究概要 |
本研究の目標は微胞子虫Nosema bombycis(家蚕微粒子病原)の特異的検出法の開発であった。 この目標はほぼ達成された。 検出法にはPCR(Polymerase chain reaction)を用いることとして,この中核となる技術-DNA断片増幅用の適切なプライマーの設計とそのテストであった。 作成したプライマーはN. bombycisの基準株-元農林省蚕糸試験場株(日大継代株と蚕糸昆虫試験場株)-由来のDNA断片を鋳型としてDNAの増幅をした。DNAの抽出材料としては,胞子より放出した芽体でもN. bombycisに感染した家蚕の蛹あるいは蛾でも差し支えなかった。用いたN. bombycis以外の材料は,1)N. bombycis様の株と考えられる微胞子虫で芝害虫スジキリヨトウより分離したものとシロスジヨトウより分離されたもの,2)Nosema necatrix,3)Vairimorpha spp. M_<11>及びM_<12>の5種である。これらの微胞子虫の胞子より放出された芽体のDNAは本プライマーによっては増幅されなかった。5種の微胞子虫及びN. bombycis基準株より得たDMAは別のプライマーによっては増幅された。このプライマーは微胞子虫のリボソーム小亜粒子RNA(SSUrRNA)の共通塩基配列をもとに設計されたものである。また,N. bombycis様のスジキリヨトウ及びシロスジヨトウ分離株の胞子は抗N. bombycis胞子表面抗原単クローン抗体で被覆されたラテックス粒子を吸着した。スジキリヨトウ分離株のリボソーム小亜粒子DNAは標準株のそれと比べて,塩基数は同じ1326,相違は3末端近い1301〜1325番目にかけて9塩基にみられたのみで,その2次構造は50番目のステムの先に小ループをもつか否かだけの相違であった。今回用いたプライマーは,このように類似した株をも区別することが明らかとなった。
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