リンゴ園土壌表層に集積した重金属(銅、鉛、ヒ素)が土壌有機物の存在状態に及ぼす影響を検討するため、青森県津軽地方のリンゴ園から採取した重金属濃度が異なる土壌について粒径分画法と比重分画法を適用して分画を行い、全炭素量、全窒素量、糖組成と腐植形態を分析した。各画分の炭素と窒素の分析によれば、リンゴ園土壌中の全銅含有量が増加するにつれて、粗砂画分への有機物の分配が増えるとともに、粘土画分への有機物の分配が減少することが明らかであった。これは、リンゴ園土壌中に集積した重金属によって植物遺体の分解が阻害されているためと考えられた。さらに、土壌中の全銅含量の増加に伴って、粗砂画分でのC/N比の低下と細砂画分でのC/N比の上昇が認められ、重金属の存在下で集積した粗大有機物が質的にも異なっていることを示唆した。しかし、比重分画法ではこうした明確な傾向はみられなかった。粒径画分の糖組成の分析に基づけば、土壌中の全銅含有量の増加に伴って、シルト画分ではG+M/A+X比が明らかに低下し、粘土画分でも低下する傾向が認められた。シルトおよび粘土画分でG+M/A+X比が低下することは、これら画分への微生物菌体および微生物代謝産物の分配が減少することを意味するものと考えられた。腐植組成については、重金属含量と明確な関係は認められなかった。以上のように、リンゴ土壌へ集積した重金属が土壌有機物の存在状態に対しても影響を及ぼしていることが初めて明らかとなった。
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