土壌中での有機物の変化過程に及ぼす銅、鉛およびヒ素の3種の重金属元素の影響を直接的に比較するため、人工的に重金属を富化させた土壌を用いて植物遺体の分解、微生物バイオマスおよび土壌呼吸を検討した。重金属添加区として、単用区(10mmol Cu kg^<-1>、20mmol Cu kg^<-1>、10mmol Pb kg^<-1>、10mmol As kg^<-1>)、混合区(5mmol Cu kg^<-1>+2.5mmol Pb kg^<-1>+1mmol As kg^<-1>、10mmol Cu kg^<-1>+5mmol Pb kg^<-1>+2mmol As kg^<-1>、20mmol Cu kg^<-1>+10mmol Pb kg^<-1>+4mmol As kg^<-1>)および重金属無添加区を設けた。オ-チャードグラス粉末を加えた土壌と加えない土壌を3年間圃場条件でインキュベートした後の有機態炭素量と全窒素量の差からオ-チャードグラス分解の阻害程度を推定した場合、モル濃度での比較によれば、銅による阻害が著しく、鉛はわずかに阻害をしたが、ヒ素はほとんど阻害しなかった。3年間圃場条件でインキュベートした土壌の微生物バイオマス炭素と窒素および土壌呼吸量を測定した場合、オ-チャードグラス添加の有無に関わらず、モル濃度で比較した場合には、銅は微生物バイオマスと土壌呼吸量を大幅に減少させ、鉛はわずかに減少させたが、ヒ素はほとんど影響を及ぼさなかった。こうした結果から、リンゴ園土壌表層に集積がみられる重金属のうち、植物遺体の分解、微生物バイオマスおよび土壌呼吸に大きく影響しているのは、銅であることが明らかになった。さらに、オ-チャードグラス添加土壌の有機物の形態を粒径分画法と比重分画法を適用して解析したが、有機物の存在状態に対する重金属の影響は判然とはしなかった。
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