強還元土壌でガス態及び土壌溶液溶存態メタンが生成した。湿生植物の植生によって、土壌メタン濃度が低下したが、植物単位重当たりの土壌メタン濃度低下能はタウコギ(T)、セスバニア(S)>ヨシ(Y)>イネ(I)>マコモ(M)であった。根圏に近似させたモデル系(気相系:70%メタン、液相系:1%メタン)実験では、植物からのメタン放出はガス態系からが圧倒的に液態系を上回っており、低酸素条件では根に発達した破生細胞間隙のため好気条件下よりも多く、また蒸散能とは無関係であり、M>I、Y、T>Sであった。0.05%稀薄寒天溶液にNa_2S_2O_4を加え還元し、ここにメチレン・ブルー(MB)を混合し、水耕栽培植物根を浸してMB酸化能を調査した結果、M、Y、I>S>Tであり、地上部切除し断面をグリースで封じた場合に、MB酸化能が低下した。本測定法は、地上部からの大気酸素の根圏への放出能を示している。水耕根のα-ナフチルアミン酸化能はT>Y、S>M>Iであった。一方、根圏土壌のメタン生成活性はI、Y、M>無植生>T、Sであったが、メタン酸化活性は類似していた。以上を整理すると、土壌メタン濃度低下能は根圏土壌のメタン生成活性の低さ、Eh上昇能、根のα-ナフチルアミン酸化能に対応することが判った。植物のガス交換能(メタン放出能、MB酸化能)とは無関係であった。KI、可溶性デンプン処理ニトロセルロース膜での根組織プリント法によるH_2O_2量は、T>S>Y>Iの畑作物、であった。in vitro系では液態メタンはFe^<2+>、H_2O_2添加により消去された。以上の結果、湿生植物根酸化能による間接的メタン消去のみならず、根に生成するH_2O_2と土壌溶液中の高濃度Fe^<2+>とで進行するFenton反応で生成するOHラジカルによる直接的なメタン消去系の存在が示唆された。
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