研究概要 |
ダイズ根粒菌グループII(Bradyrhizobium elkanii)の宿主植物への感染において、根粒菌が生産するインドール酢酸(IAA)がどのように関わっているかを明らかにするために、各種のmutantを作製し、宿主植物に対する根粒形成や感染過程を観察し、以下のような結果を得た。 B.elkanii USDA 31株からIAA生産能を激減させたmutant Tn3株を単離し、形成根粒数を親株と比較したところ、明らかに減少していた。Tn3株接種時に、外部から IAAを投与したところ、根粒数は親株レベルまで回復した。したがって、B.elkaniiの生産するIAAが根粒形成に関わっているものと考えられた。 宿主植物であるダイズ根の形態的観察より、IAAを通常レベル生産する B.elkanii野性株接種時のみに、ダイズ根の表面に局所的な隆起が認められた。この隆起は1-2層の肥大伸長した外皮層細胞から形成されており、外皮層隆起(Outer Cortex Swelling,以下OCS)と名付けた。OCS構造は、IAA低生産mutant Tn3株では観察されなかった。次に、最近注目されている Nod Factor(根粒菌から宿主植物へのアシル化キチンオリゴマーシグナル)との関わりを検討した。nodD_2D_1KABC遺伝子のみを欠損しNod Factorを生産しないmutantを構築して、ダイズに接種したところ、根粒は形成されなかったが、OCS構造は観察された。したがって、OCS形成に、B.elkaniiの生産するIAAが関わっている可能性は非常に高く、形成されたOCS構造は根粒菌のprimitiveな感染様式と深く関わっていると考えられた。 B.elkaniiのIAA生合成系のkey enzymeであるindolepyrvate decarboxylase(IPDC)のホモロジーに基づくクローニングは失敗したが、IPDCタンパクを精製し、N末端から30のアミノ酸残基を決定したので、これらの情報を基に再度クローニングを行い、遺伝的に特徴づけられたIAA生産のmutantを構築する。
|