[目的]酸性土壌で植物が受ける障害の中でアルミニウム(AI)が中心的な位置を占めている。この有害AIの形態と濃度については測定法も含め不明確のままである。本年は土壌および施肥管理を異にする約200点の土壌溶液の分析値をもとにコンピュータプログラムによる近似計算法を改良して土壌溶液のAI種とその濃度を求めた。 [結果]1.土壌溶液の全AI(Alt)の質量均衡式を、Alt=[Al^<3+>]+[AlOH^<2+>]+[Al(OH)^+_2]+[Al(OH)^0_3]+[AlSO^+_4]+[AlHPO^+_4]+[AlH_2PO^<2+>_4]+2[Al_2(OH)^<4+>_2]+3[Al_3(OH)^<5+>_4]+6[Al(OH)^<3+>_<15>]+13[Al_<13>O_4(OH)^<7+>_<24>]とし、多核体Al種(存在が有力視されている)を想定し、かつこれらAl種の熱力学的平衡定数を土壌溶液のイオン強度に合せて補正して各種形態のAl種を計算した。それによると、土壌溶液中ではpH条件に応じてAl^<3+>、AlOH^<2+>、Al(OH)^+_2、Al(OH)^0_3、AlSO^+_4、AIHPO^+_4およびAl_6(OH)^<3+>_<15>が主要成分種を占めることが判り、2、3および13量体Al種は有意な量では存在しないしないことが明らかとなった。2.主成分種となることの多いAI^<3+>、Al(OH)^0_3、Al(OH)^+_2およびAl_6(OH)^<3+>_<15>はpH-pAlt図で明確な分布域を有することが明らかとなった。3.pH-PAlt図の特徴から、理論的にはpH5〜6付近で、多核体Al種Al_6(OH)^<3+>_<15>が植物毒性を発現する可能性があることを示唆した。なおこの場合の土壌溶液のAlt濃度は約10^<-3>mlL^<-1>である。15EA03:なお本年は強酸性を呈する土壌である茶園について土壌診断を行うと同時に、これらの土壌の酸性の特徴も明らかにした。
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