研究概要 |
1.根粒内でのポリアミンの機能を理解するために,硝酸による窒素固定活性の阻害におけるスペルミジン(Spd)の作用について検討し,次のような結果を得た. a)根粒バクテロイドの窒素固定活性がSpdそよびSpdの酸化分解によって生成するH_2O_2によって阻害されることを確かめた. b)硝酸を投与したダイズの根粒のSpd含量に変化はなかったが,H_2O_2含量は増加した.また同時に,Spdオキシダーゼ活性も増大した. c)H_2O_2消去系酵素の活性を調べたところ,根粒ではアスコルビン酸ペルオキシダーゼ活性が,バクテロイドではカタラーゼ活性がそれぞれ硝酸投与によって抑制された. これらの結果から,根粒の窒素固定活性の硝酸による阻害にはSpd分解産物のH_2O_2が関与していることが示唆された. 2.根粒のSpdオキシダーゼの局在性と発現時期を明らかにすることによって,根粒内でのSpdの酸化分解をさらに詳細に理解しようとした.そのため,本酵素タンパクの分離,精製を試みた.イオン交換,吸着,およびゲル濾過の各カラムクロマトグラフィーによって,根粒から比活性で370倍,SDS-PAGEで1本の活性バンドを得るところまで精製した.現在,本酵素に対する抗体の作成と,N-末端アミノ酸配列の決定を行っている.
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