研究概要 |
ペニシロライシンは相対分子質量18,529、等電点9.6の金属プロテアーゼで、1モル当たり1グラム原子の亜鉛を持つ。N末端にトレオニン、C末端にシステインを持ち、α-ヘリックス構造を19%、β-構造を58%持ち、キレイト試薬の投与により亜鉛を除くと、アポ酵素はα-ヘリックス構造部の約50%が破壊し酵素活性を失う。 ペニシロライシンの活性中心残基の探索のためにKunkel法による部位特異的変異を行った。特異酵素を得るために、ペニシロライシン分子中のGlu-42, Glu-65, Asp-80, Glu-86, Asp-104, Tyr-106, His-118, Asp-121, His-128, Glu-129, His-132, Asp-143, ASp-164の各残基である。ペニシロライシンの中のHis128-Glu129-X-Y-His132部分は一般の金属酵素の亜鉛結合モチーフの部位と相同性を持ち、この部分はペニシロライシンの亜鉛結合部位と推定されている。この部位のそれぞれの部位特異的変異酵素遺伝子を発現させ活性を調べた。活性の測定にあたっては、変異酵素遺伝子の発現産物が確かに変異ペニシロライシン遺伝子由来のものであることの確認のためのWestern blotting,発現産物の活性の判定はペニシロライシン遺伝子の産物のプロプレタンパク質が自己消化により成熟型の酵素になることと、発現産物をのせたカゼイン・プレート上の発現産物の周辺にクリアゾーンが生成するか否かの活性測定法によった。 以上の結果、ペニシロライシンのHis128-Glu129-X-Y-His132の亜鉛結合モチーフであるHis-28, Glu-129, His-132の各アミノ酸残基はペニシロライシンの触媒活性発現に必須の残基であることを明らかにした。さらに、Asp-121とAsp-164の2残基は酵素の触媒活性に必須であることを明らかにした。 以上の結果を総合すると、ペニシロライシンは金属結合モチーフこそサーモライシンと類似しているが、触媒残基はサーモライシンと異なることが明らかとなった。
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