我々は脱窒菌Alcaligenes faecalisS-6株の亜硝酸還元酵素への電子伝達物質として同菌より青色同蛋白質シュードアズリンを発見し、銅蛋白間での電子伝達を世界で初めて示すと共に、これら銅蛋白間の電子伝達機構についての解析を行ってきた。本研究では、亜硝酸還元酵素が保持する2種類の銅原子の中で、タイプ1銅配位子の改変体Met150Glu、タイプ2銅配位子の改変体His135Lysに対して、シュードアズリンおよびメチルビオロジェンを電子供与体として速度論的解析を行った。メチルビオロジェンを用いた場合、Met150Gluでは酵素活性が検討されたが、His135Lysでは活性が全く検出されず、タイプ2銅が活性に関与することが明らかになった。さらに、シュードアズリンを用いた場合には、Met150Gluのシュードアズリンに対する見かけの親和性にはほとんど変化が観察されないものの、電子伝達活性は1/1000に大幅に低下していた。これらの事実から、亜硝酸還元酵素のタイプ1銅がシュードアズリンから電子を受け取り、タイプ1銅から電子を渡されたタイプ2銅が活性に関与することが明らかなった。シュードアズリンの銅原子の周囲の分子表面に多数のLys残基が存在しており、これらのアミノ酸残基が亜硝酸還元酵素との相互作用を担うことが示唆された。そこで、シュードアズリンの9個のLys残基を1つずつAlaまたはAsp残基に置換して、亜硝酸還元酵素との相互作用を調べたところ、との改変体も亜硝酸還元酵素への電子伝達活性には影響を与えなかったが、タイプ1銅に近い変異のみが親和性を大きく低下させることが明らかになった。これらの結果から、シュードアズリンは自身の銅原子を亜硝酸還元酵素に向けて、Lys残基を介した静電的相互作用により亜硝酸還元酵素と相互作用していることが示された。
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