ダイズβ-アミラーゼのSH基修飾の本酵素の活性発現における影響を明らかにするため、SH基が修飾されたダイズβ-アミラーゼの三方晶結晶を調製し、そのX線結晶構造解析を行った。また、本酵素の大腸菌での大量発現系を構築するための準備を行った。 1.SH基修飾結晶のX線結晶構造解析 既に調製したダイズβ-アミラーゼ三方晶の保存中に2-メルカプトエタノールが存在すると、空気酸化によりSH基が酸化され、2-メルカプトエタノールとのmixed disulfideを形成することを見いだした。そこで長期保存中であったダイズβ-アミラーゼ三方晶に本酵素の生成物であるマルトースを導入し、マルトース複合体を形成させ、その結晶データを2次元検出器により2.0Åまで収集し、その構造の精密化を行った。最終的に2.1Åまでのデータを用いR=0.17まで精密化したモデルには485残基のアミノ酸と2分子のマルトースおよび約200の水分子が含まれている。解析の結果、活性部位近くに存在するCys95とCys343はいずれも2-メルカプトエタノールによって修飾されているにもかかわらず2分子のマルトースはサブサイト1-4に結合しているのが判明した。しかし、Cys95から延びるGly96-Ile103のフレキシブルループは未修飾酵素の場合と異なり「閉じた構造」をとれずその電子密度は観察されなかった。このことはCys95の修飾置換基によりループ部分が「閉じた構造」をとれず、その構造が不安定になっていることを示している。一方、Cys343は本酵素のサブサイト4の近くに存在し、その修飾置換基は結合グルコース残基との衝突を避ける方向に延びているのが認められた。このことより、Cys343の置換基による触媒部位の局所構造変化が酵素の失活の原因となると推定された。 2.ダイズβ-アミラーゼのクローニング 本酵素のアミノ酸配列よりプローブを作成し、mRNAライブラリーよりcDNAの大腸菌でのクローニングを試みている。
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