研究概要 |
【1. SH修飾酵素-基質アナログ複合体のX線結晶構造解析】 ダイズβ-アミラーゼの活性部位近傍に存在し、SH試薬による失活の原因となる2個のSH(Cys95とCys343)をメルカプトエタノールによって修飾した酵素とマルトースおよびマルトテトラオースとの複合体のX線結晶構造解析を行い、これらのCys残基修飾の影響について検討した。両システイン残基が修飾された酵素の結晶に200mMマルトースあるいは50mMマルトトリオースを浸析し、その2.0Å分解能までの回折データを測定し、2.1Å分解能までのデータを用いてプログラムXPLORおよびTNTによって構造の精密化を行った結果、最終的なR値はそれぞれ15.9および16.5%まで低下した。マルトース複合体では未修飾酵素の場合と同様に2個のマルトースが連続して、サブサイト1-4に結合するが、サブサイト1-2に結合しているマルトースの温度因子は上昇していた。一方、マルトトリオースは主にサブサイト3-5に結合しているのが認められた。いずれの場合も残基番号96から103のフレキシブルループの電子密度は消失していた。これらの結果からCys95の修飾により、フレキシブルループの動きが妨げられ、サブサイト1、2の基質とのアフィニティーが著しく減少することが判明した。一方、Cys343の修飾はサブサイト3,4の基質の結合には大きく影響しないが、基質の結合により修飾置換基がThr342周辺の主鎖に影響し、触媒作用を阻害している可能性が示唆された。 【2. β-アミラーゼ遺伝子のクローニングと発現ベクターの作成】 ダイズ登熟期種子より調製したmRNAライブラリーからβ-アミラーゼのcDNAをスクリーニングし、全コード領域を含む完全鎖長(1768bp)のcDNAを得た。このcDNAを用い組換えβ-アミラーゼの発現条件を検討した結果、pkk233-2ベクターを用い、全菌体タンパク質の10%という高レベルでの発現に成功した。この組換え型酵素を菌体抽出液より精製して、その酵素的性質を天然型のものと比較した結果、N末端のブロックの有無と等電点以外の性質は全て一致した。組換え型酵素の結晶化条件を検討した結果、蒸気拡散法により、構造解析に適した結晶を得ることができ、その結晶学的は天然型のさんほう三方晶のものとほぼ一致した。現在、組換え型酵素の結晶のX線結晶構造解析を進めている。
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