研究概要 |
1.異種生物共役系(グルタチオン生合成系強化大腸菌-好温性ラン藻混合系)の構築 前年度取得したグルタチオン生合成系強化大腸菌株と好温性ラン藻生菌との異種生物共役系によるグルタチオン生産能の検討を行った。反応系のバッファーとして50mMリン酸バッファーpH7.0が最適であり、原料アミノ酸の最適濃度についてはシステインが5mM、グルタミン酸、グリシンはそれぞれ20mMであった。大腸菌gshI,gshII強化株の混合比は重量比で30:1(活性比で1:3)が最適であり、また大腸菌とラン藻生菌の最適混合比(重量)は1:1であった。これらの最適反応組成下、37℃,2000luxでのグルタチオン生産能は6時間でラン藻湿重量当たり約7mMに到達した。これは、現在工業的に用いられている酵母からの抽出系と比較して約1.5倍高い生産量である。しかも生成したグルタチオンの大部分は菌体外に分泌されており、生産系として極めて好都合な特性を示した。しかしながら、ラン藻生菌単独の生産系で最適温度47℃では強化大腸菌添加による共役効果がほとんど見られなかった。これは、大腸菌グルタチオン生合成酵素が47℃で不安定になったためと思われる。 2.大腸菌グルタチオン生合成遺伝子のラン藻細胞への導入 ラン藻細胞内での自己共役系によるグルタチオン生産系を確立するために、大腸菌グルタチオン生合成遺伝子gshI,gshIIをラン藻-大腸菌シャトルベクターを用いてラン藻細胞内への形質導入を試みた。ラン藻宿主として自然形質転換能を有するSyncchococcus sp.PCC7002株をシャトルベクターとしてpQCxを用いて基礎的な形質転換条件の検討を行った。その結果、通常よりも5倍高い塩濃度でラン藻を培養し、集菌直前に一晩浸透圧ショックを与えることにより高い形質転換効率が得られることが判明した。
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