酵素製剤等の蛋白性薬物のリポソーム結合性ドラッグデリバリーシステムの開発を目的として、蛋白質の活性を損なうことなく、目的蛋白質にリポソーム結合性を付与する方法として、目的蛋白質-cDNAの5'-末端に、遺伝子工学的手法によりN-ミリストイル化シグナル配列を導入してN-ミリストイル融合蛋白質遺伝子を構築し、これをバキュロウィルスを用いた発現系を用いて大量調製する手法の確立を試み、以下の結果を得た。 成熟型腫瘍壊死因子(TNF)をコードするcDNAの5'-側上流に、Rasheed leukemia virus gag-蛋白質あるいは牛脳Gαil-蛋白質のN-ミリストイル化シグナルをコードする合成オリゴヌクレオチドを組み込むことにより、2種のN-ミリストイルTNF融合蛋白質遺伝子の構築に成功した。この2種のN-ミリストイルTNF融合蛋白質遺伝子についてin vitro転写・翻訳系により蛋白合成効率ならびにミリストイル化効率を検討した結果、両融合遺伝子ともに効率良い蛋白合成ならびにミリストイル化が認められた。 このうち、Rasheed leukemia virus gag-蛋白質のミリストイル化シグナルを組み込んだ融合遺伝子をバキュロウイルス発現系のトランスファーベクターpACYM1中に挿入しバキュロウイルスDNAとともに夜盗蛾培養細胞にトランスフェクションしたところ、抗TNF抗体で免疫沈降される分子量18kDaの融合TNFの発現が確認された。さらにこの組み換えウイルス感染細胞を[^3H]-ミリスチン酸存在下で培養することにより、融合TNF分子中に特異的な[^3H]-ミリスチン酸の取り込みが生ずることが明らかになり、バキュロウイルス発現系によりミリストイル化融合TNFの大量発現が可能であることが明らかになった。
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