本研究は、酸化細菌の細胞膜結合型キノプロテイン脱水素酵素である大腸菌グルコース酸化系に関与するグルコース脱水素酵素(GDH)と酢酸菌アルコール酸化系のアルコール脱水素酵素(ADH)両者のユビキノンとの反応部位を明らかにすることを目的としいる。この目的のために、GDHについては、そのユビキノンとの反応の特異的阻害剤をスクリーニングし、カプサイシン系のいくつかの有力な阻害剤を見つけだした。さらに、これらの阻害剤の作用様式や作用部位を検討するとともにミトコンドリアNADH脱水素酵素のそれらと比較し、GDHはかなり異なるユビキノン結合部位を有することを明らかにした。現在、これらの有効な阻害剤に対する変異体の分離を試みている。将来、その変異体の遺伝子解析を行なうことで、反応部位に関与するアミノ酸残基を特定することを目指している。一方、GDHと異なり、ADHには3つのサブユニットが存在し、それらすべてがユビキノンとの反応に必要であるが、これらのサブユニットを解体・再構成することによりその第2のサブユニットにユビキノンサイトが存在することを明らかにした。さらに、このADHにはユビキノン還元活性に加え、還元されたユビキノールを酸化する能力を備えていることを明らかとした。また、このユビキノール酸化部位と従来から知られていたユビキノン還元部位の関係をユビキノン類縁体阻害剤の影響とユビキノン類縁体による基質特異性から検討し、ADHのコビキノンおよびユビキノール反応部位はともにそのサブユニットIIに存在するが、両者はキノンに対する異なる構造特異性を示し、異なる領域に存在すると結論づけた。
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