研究概要 |
1.アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP-S)のX線結晶構造解析: PAP-Sの結晶構造は分子置換法により解いた。1.7Aまでの高分解能のデータに対して、261個のアミノ酸残基と Asn255 に結合した1個のN-アセチルグルコサミン、227個の水を含むモデルの精密化を行い、現在、R-ファクターは20.7%となった。このモデルとリシンA鎖の既報のモデルを比較すると主鎖構造は非常によく似ていた。しかし、分子内S-S結合の有無、触媒部位周辺のTyr側鎖の配位、ArgやLysの分子表面での分布は両者で異なっていた。活性部位にあるTyr72はアデニンとの結合に重要な役割を果たしていると考えられるが、PAP-SではリシンA鎖と異なり、この側鎖の位置がゆらいでいる可能性がでてきた。また、基質アナログであるフォルマイシン-5'-一リン酸やアデニン溶液に対して浸漬した結晶の回折強度データも収集した。 2.リシンA鎖(RA)の活性部位クレフト外にあるアルギニン残基の部位指定変異: RAの活性部位クレフト近傍にあるArg213をSerに、活性部位と反対側に位置するArg196とArg235をGlnおよびSerにそれぞれ変異させ、大腸菌で発現、精製後、それぞれの変異タンパク質についてラット肝リボソームを基質として RNA N-グリコシダーゼ活性を速度論的に解析した。その結果、Arg213がRAの触媒反応に、Arg196は基質結合に関与しているものと推定された。さらに、Arg235は、変異によって活性がほとんど消失したことから、活性発現に極めて重要な役割を果たしているものと推定された。 3.リシンA鎖へのシステイン残基の導入: RA分子の立体構造上PAPと相同な位置にシステイン残基を導入した。Arg39,Ala90およびPhe108をすべてCysに置換した変異RAを作成し、大腸菌XL1-Blueで発現を誘導すると、すばやく大腸菌の増殖を停止させた。この変異RAの大腸菌の増殖に及ぼす影響は、野生型RAに比べて著しく強く、PAPの発現の場合とよく似ていた。
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