1.アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP-S)の高分解能X線結晶構造解析:PAP-Sの単結晶(空間群I222、格子定数a=79.1Å、b=85.3Å、c=92.5Å)について高エネ研PFのワイセンベルクカメラを用いて1.5Å分解能までの回折強度データを収集した。構造は分子置換法により解き、精密化には、XPLORとTNTを用いた。最終モデルは、261個のアミノ酸残基に1個のN-アセチルグルコサミンを含み、9.0〜1.8Åのデータに対してR値は16.9%であった。リボゾーム基質特異性の異なるリシンA鎖(RA)の構造(配列の相同性30%)とPAP-Sを比較すると、フォールデイングパターンはよく似ており、Caのr.m.s.偏差は0.81Åであった。両分子の構造で異なる点として、分子内S-S結合の有無、活性部位クレフト中のTyr72の配置、表面電荷の分布、一部のループ領域があげられる。また、低分子基質アナログとPAP-Sの複合体のモデルの精密化も現在進行中である。2.RAの変異体の構造と活性:RA遺伝子やその変異体が挿入されたプラスミドpKK223を含む大腸菌XL1-Blueを用いて、25℃でRAの発現を行った後、菌体溶解液上清よりRAを精製し、活性測定と分光学的解析を行った。活性部位クレフト周辺にあるArg213をSerに変異したRAのKm、蛍光スペクトル及び遠紫外CDスペクトルは、野生型と同じであったが、kcatは1/15に低下していたことから、Arg213も、触媒反応に関与しているものと推定された。一方、活性部位クレフトの反対側に位置するArg196とArg235をGlnおよびSerにそれぞれ変異させた結果、活性は野生型の1/330および、1/17000にそれぞれ低下した。速度論や分光学的な解析の結果、Arg196はリボゾーム基質との結合に関与しており、Arg235も、活性発現に極めて重要な役割を果たしているものと推定された。また、RA分子の立体構造上PAPと相同な位置にシステイン残基を導入することによって、大腸菌の増殖を強く阻害する変異体が得られた。
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