タンパク質やポリペプチドは、ポリソームから離れたあと、種々の形でいわゆる翻訳後修飾(Post-translational modification)をうける。タンパク質の翻訳後の修飾の一つであるチロシン硫酸化の機能意義はまだ不明なところが多く、その解明は極めて重要である。今回の研究では、タンパク質のチロシン硫酸化が細胞内の輸送機構とくに分泌に極めて重要に関与していることから、Sorting(選別輸送)のシグナルの可能性があるので、ゴルジ体から細胞外への分泌機構解明を目的に研究した。今年度はゴルジ体中の硫酸化チロシンタンパク質に特異的に結合するBinding proteinの分離精製および諸性質を明らかにすること目的とした。 硫酸化チロシンタンパク質Binding proteinの分離・精製は牛肝臓のミクロゾーム画分からショ糖密度勾配超遠心分離し、その界面(0.8/1.0モル)からゴルジ体を分離し、次に1%Triton X-100処理を行い、可溶性画分から行った。この画分を硫酸化チロシンセファロース、DEAE-セファロース、ヒドロキシアパタイトおよび硫酸化チロシンセファロースで精製した。その結果、175Kのタンパク質が精製できた。ConA-セファロースに結合することから、糖タンパク質であることが判明した。また、硫酸化チロシンセファロースとこのタンパク質との結合に関するpHの影響を検討した結果、pH6.0以上では強い結合を示したが、pH5.5以下では解離した。このことから、分泌小胞内で解離することが予想される。現在、このタンパク質のN端アミノ酸配列を決定している。また、モノクローナル抗体も作製している。
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