研究概要 |
本研究の目的は,トリアシルグリセロール合成系の初発反応であるアシル-CoA合成酵素を細胞膜系から可溶化精製し,部分アミノ酸配列を分析して,その情報をもとに本酵素の遺伝子構造を解明することにある。1.アシル-CoA合成酵素を登熟期サフラワー種子の小細胞体膜から可溶化,精製する条件を広範に検索した結果,これまで著しかった失活をくい止めることができるようになった。そのため酵素の精製が進展し,ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分子量78,000を示すバンドが,カラムクロマトグラフィーの溶出パターンと酵素活性との相関性から,目的とするアシル-CoA合成酵素であることがわかった。電気泳動後,ゲルからPVDF膜にブロッティングしてアミノ酸シークエンサーにかけたところ,N末端はブロッキングされていることが明らかになった。2.登熟期サフラワー種子細胞中のmRNAに対するcDNAライブラリーを作成した。さらにトウモロコシ,ナタネなど数種の油糧種子のライブラリーを作成する予定である。3.アシル-CoA合成酵素の精製は,現在タンパク質として同定されるまでに進展しているが,膜酵素としての強い疎水性のため,アグリゲーションして混在する不純タンパク質を完全には除去できない。さらに精製を進めている。N末端はプロテアーゼ処理をして,内部アミノ酸配列を調査する予定である。これと並行して,動物で得られているアシル合成酵素遺伝子の部分塩基配列を化学合成し,それをプローブとして油糧植物の遺伝子を同定する試みを開始する予定である。
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