この研究は、組換え体ヒトセントロメア蛋白質の特異的DNA結合能を積極的に活用し、各種真核生物の染色体に存在するセントロメアDNA配列を単離、解析することを目的としている。 1.DNA結合活性を持つ新たなヒトセントロメア蛋白質の同定 現在までにDNA結合能を持つ蛋白質としては、セントロメア蛋白質B(CENP-B)のみが知られていた。CENP-Bの他に、DNA結合能を持つセントロメア蛋白質としては、セントロメア蛋白質A及びC(CENP-A、CENP-C)が候補に考えられた。そこで、ヒトCENP-Cの遺伝子をクローン化し、大腸菌に発現させた組換え体蛋白質を用いた解析を行った。その結果、新たにヒトCENP-CもDNA結合能を持つことが明らかとなった。現在、このCENP-Cが結合するヒトゲノムDNA配列について解析を行っている。 2.CENP-BのDNA結合能を用いたウシセントロメアDNA配列の単離 既に、組換え体ヒトCENP-BのDNA結合能を利用したDNA免疫沈降法を用いて、ヒトゲノムDNAライブラリーより直接、CENP-B結合配列を多数含むセントロメアDNA配列(アルホイドDNA)を単離する事に成功している。CENP-B遺伝子は少なくとも哺乳動物においてよく保存されている事より、ウシ染色体においてもCENP-B結合配列が存在することが予想された。そこで、先と同様な手法を応用し、ウシゲノムDNAよりヒトCENP-Bが結合する配列としてのウシセントロメアDNA配列を単離することを試みた。得られたDNAの塩基配列を解析したところ、ヒトCENP-B結合配列と相同性を示した。しかも、その配列はヒトCENP-Bにより認識された。現在、この配列がウシセントロメアDNA配列であるかどうかの検討を行っている。
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