研究概要 |
化学合成独立栄養性硝化細菌は、地球環境における硝化作用および元素循環、特に窒素と炭素において重要な役割を果たすことが古くから知られている。しかしながら、本菌におけるこれら反応系の内容については、多くの未解明の部分が残されており、その応用面における利用の問題も極めて困難な状態が生じている。その最大の理由は、現在もなお難しい培養と純粋分離に起因しており、研究用菌株は極限られた数株にすぎない。生態系における硝化細菌の役割の解明と応用のためには、様々な環境から分離した菌株を得る必要がある。本研究はこのような目的に立脚して実施された。以下にその概要を記載する。 1.硝化細菌の純粋分離 a)低栄養亜硝酸酸化菌(平成6年度実績)一国内各地土壌 150検体を試料として10^<-1>-10^<-6>の段階的希釈培地により集積培養を行い、基本培地では生育阻害を受けるが、10^<-3>-10^<-4>希釈培地では良好な生育を示す培養が得られた。これらの培養から、著者らが考案したgellan gum平板培地に塗抹培養を行い、コロニー形成の良好な低栄養性菌を純粋分離した。本菌の菌学的諸性質を調べた結果から、Nitrobacter sp.と分類し、N.sp. TH21と命名した。 b)低温性アンモニア酸化菌(平成7年度実績)-関東以北500カ所の土壌を分離源とし、5℃、30日間の集積培養を行った。亜硝酸生成能の良好な培養についてさらに温度別(5-30℃)培養を実施し、10-20℃で生育の良好な培養を選択した。本培養についてa)項と同様の方法によりコロニーを形成させ、20℃を至適温度とする低温性菌株を純粋分離した。菌学的諸性質の検討結果から、Nitrosovibrio属に分類され、N.sp. TYM9と命名した。a)項については、Soil Microorganisms(土と微生物),No.45,61-65(1995)に掲載され、b)項については、日本微生物生態学会(1995)において口頭発表を行った。 2.分離菌の応用 上記のとおり、低栄養および低温の各硝化細菌が取得されたが、初期の計画どおり進行しなかったため、廃液処理系等への応用実験の実施には至らなかった。
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