申請者らは、これまでにレタス(Lactuca sativa L.cv.Grand Rapids)種子の赤色光照射による発芽誘導が、発芽を促進する内生の活性型ジベレリン(GA)であるGA_1の増加を介して起こることを明らかにしてきた。さらに、昨年度は、GA処理したGrand Rapids種子から得られたcDNAライブラリーを用いてデイフアレンシヤルスクリーニングを行って二種類のGA誘導性遺伝子のcDNAクローンを得、そのうちの一つ(cLRG5)のインサートの全塩基配列を決定し、それがアルコールデヒドロゲナーゼと高い相同性を有する遺伝子であることを明らかにしている。本年度は、もう一種のクローンcLRG11のインサートについても塩基配列を決定した。cLRG11のインサートは、611bpから成り、95アミノ酸残基から成るタンパク質をコードするものと推定された。この推定アミノ酸配列に対して、有意なホモロジーを示すものは認められなかったが、部分的には、酵母におけるガラクトース誘導遺伝子の正の制御因子であるGAL4と高い相同性を示しており、LRG11が何らかの遺伝子発現制御因子である可能性も考えられる。 Grand Rapids種子においては、GAや赤色光照射により誘導される発芽はアブシジン酸(ABA)の投与によって完全に抑制される。そこで、LRG11と昨年度単離したLRG5についてGAや赤色光照射により増加するmRNAの発現が発芽を完全に抑制する濃度のABAによりどのような影響を受けるかをノーザン解析により調べた。その結果、ABAはこれらのクローンのmRNAの発現には影響せず、これら遺伝子がABAの作用段階より上流で、あるいはABAとは異なるシグナル伝達系で機能している可能性が示唆された。現在、LRG5、LRG11の発芽種子における発現部位の特定を行うためin situ hybridizationを行うため準備を行っている。
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