アンチマイシンとシトクロムbとの相互作用を分子レベルで理解するためには、アンチマイシンの活性発現に要求される必須構造因子を明らかにしておくことが重要である。そこでまず、種々のアンチマイシンを合成し、構造活性相関研究を通して必須構造因子の同定を行った。 アンチマイシンは、サリチル酸とジラクトン環部の2つの部分構造からなっている。天然ジラクトン環構造は複雑で全合成が容易でないために、ジラクトン環に代わりうる適当な部分構造の探索を行った。その結果、ジフェニールエーテルなど他の疎水性の高い部分構造に置換しても充分に活性が保持されることが判明し、ジラクトン環構造そのものは活性発現に必須でないことがわかった。次に、ジラクトン環部に相当する部位を置換ジフェニールエーテルに固定し、サリチル酸部を種々構造修飾した。その結果、3-ホルミルアミノ基の存在は活性発現に極めて重要であること、また、2-水酸基とアミドカルボニルとの間で形成される分子内水素結合が活性発現に必須であることが明らかになった。 今後、天然アンチマイシン抵抗性ミトコンドリア変異株を用いて、一連の合成アンチマイシンの活性を評価することを計画している。
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