シスト線虫の生活環に関わる生理活性物質として、(1)土壌中に存在する孵化阻害物質(2)ジャガイモシスト線虫の孵化促進物質の毛状根による生産と性質、(3)誘引・忌避物質、(4)運動賦活化物質、(5)寄生促進物質、の5項目を研究した。 (1)シス線虫類は寄主植物の根から分泌される孵化促進物質に感応して孵化が引き起こされる。ところが、実際の圃場では孵化しにくい。土壌中にはシスト線虫の孵化阻害物質が存在し、低分子量の有機化合物であることを明らかにした。大量採取法を改良してこの物質を捕集し、GC分析を行った。 (2)トマト毛状根を作成し、液体培地中で培養してジャガイモシスト線虫の孵化促進物質を生産させ、安定性を検討した。 (3)ダイズシスト線虫の誘引・忌避試験法を開発し、定性的に使用してエゾノギシギシ成分が誘引作用を有することを見出した。 (4)ダイズシスト線虫の休止幼虫を用い、これを超低濃度で運動賦活化する物質の単離を行った。シトステロール配糖体、フタル酸ジエステルに活性を見だした。活性は、10^<-13>g/mlから現われ、10^<-10>g/mlの濃度で活性を見倣すことができる。線虫はこの濃度勾配を利用して寄生すると考えられる。しかし活性の本体は上記の物質ではなく、更に1/100程度の微量な物質と推定した。 (5)エゾノギシギシ酸性部を添加した土壌でダイズシスト線虫の寄生実験を行うと、寄生数が3倍に増加した。活性物質は(4)の運動賦活化物質を推定した。
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