研究概要 |
新鮮なマイワシを使用し、まず表面の粘液を脱脂綿で拭き取って集めた。つぎに、皮部からリン酸緩衝液で水溶性タンパク質を抽出した。以上の抽出液を用いて、リノール酸を基質として反応させ、脂質過酸化に起因する共役ジエン吸収(223nm)を指標として酵素活性を測定した。皮には、加熱による脂質過酸化活性が存在し、ゲルろか(Sephadex G-200)、イオン交換カラム(CM-Sephadex C-50,RESOURCEQ)による精製の結果、主要活性画分とヘムの分布が一致したことから、ヘム含有酵母の存在が確認された。主要活性画分によるリノール酸酸化物の組成を分析したところ、9および13-ヒドロペルオキシドの比は約2:3であり、今までに得られた13-ヒドロペルオキシドを選択的に生成する画分は得られなかった。マイワシ皮の脂質過酸化酵素は、ヒドロペルオキシドを生成するとともに分解する活性が極めて強く、同時にヒドロペルオキシドの異性化を触媒するものと考えられた。 皮の粘液には、強い脂質過酸化活性が見られ、活性画分を部分的に精製を進めたところ、皮と同じ挙動を示す成分が検出された。タンパク質あたりの活性は粘液が皮より著しく高く、本酵素は皮から粘液に分泌されていることが示唆され、その生理的意義について興味が持たれた。 また、皮抽出物のヒドロペルオキシドリアーゼ活性は、脂質過酸化活性と分離できず、同一タンパク質が両者の活性を持っているものと考えられた。
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