太平洋沿岸各地で漁獲された新鮮なマイワシSardinops melanostictusの皮から抽出した水溶性物質を、ゲル濾過クロマトグラフィーで分画したところ、リノール酸を基質とした反応により、過酸化活性を有する2つのピークが得られた。いずれの画分ともヘムたんぱく質であった。この両画分をリノール酸と種々条件下で反応させ、生成物を分析した結果、いずれの画分とも、9および13-ヒドロペルキオシドの比は、約6:4と自動酸化生成物(1:1)に近く、また、13-ヒドロペルオキシドはラセミ体であった。この結果、マイワシ皮からは、予期したような13S-ヒドロペルオキシドを選択的に生成するリポキシゲナーゼを単離することはできなかった。そこで、皮中に存在する脂質過酸化活性物質をさらにイオン交換カラム、電気泳動で精製し、各種スペクトルを測定した結果、主成分はミオグロビン、第2成分はヘモグロビンだった。ミオグロビンについては、一次構造の決定を試みたところ、既知のキハダマグロに酷似していた。ミオグロビンには、ヒドロペルオキシド分解活性があり、低分子アルデヒドの生成により、魚臭発生に関与していることがわかった。ミオグロビンは、ヒドロペルオキシドにより活性化されたが、その機構にはフェリル型ミオグロビンの生成とともに、ヒドロペルオキシトの分解による活性酸素種の関与が示唆された。
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