研究課題/領域番号 |
06660146
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
食品科学・製品科学
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 道子 東北大学, 農学部, 教務職員 (60250734)
|
研究分担者 |
駒井 三千夫 東北大学, 農学部, 助手 (80143022)
古川 勇次 東北大学, 農学部, 教授 (60005626)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
キーワード | タンパク質栄養 / 食塩嗜好 / カプサイシン / アルコール嗜好 / 亜鉛欠乏ラット / 鼓索神経応答 / 炭酸脱水酵素 / 三叉神経舌枝応答 |
研究概要 |
従来、食の嗜好は遺伝や学習によって左右されると考えられていたが、われわれは生態の栄養状態が嗜好性のかなり大きな因子となると考え、食物嗜好と栄養との接点とそのメカニズムについて検討を行ってきた。栄養条件としてタンパク質と微量栄養素である亜鉛を取り上げ、これらの充足度によって味覚神経応答がどの様に変化し、それが嗜好性とどのように結びつくのかを検討した。更に、アルコールやカプサイシンなど修飾因子との関係を検討することにより、味覚と嗜好と生体の栄養状態を統御しているメカニズム解明の手がかりが得られると考えた。低タンパク質栄養では5種の基本味に対する味神経の応答が全体に低下し、感覚が鈍くなり、本来ほとんど嗜好されない塩味、苦味なども高濃度のものまで摂取するようになった。アルコールに対する神経応答は逆に低タンパク質栄養で高く、感覚が鋭敏になることにより、アルコールに対する嗜好は低下した。このように、タンパク質栄養により味覚神経応答が影響され、食の嗜好が変わることが明らかになった。さらに忌避される味である塩味、苦味は、アルコール、カプサイシンなどによって味神経応答が増強あるいは減少し、選択嗜好も変化した。亜鉛は味覚受容器の構造維持や補酵素としての働きにより、味覚との関連が指摘されていたが、亜鉛欠乏ラットでは食塩水及び炭酸水の嗜好が顕著に増加した。舌表皮組織、顎下腺では亜鉛酵素である炭酸脱水酵素の活性が有意に低下した。また同様に亜鉛関連酵素であるアルカリフォスファターゼ活性の低下した個体では、苦味の選択率が50%近くなり、味覚異常が示唆された。鼓索神経応答には変化が認められなかったが、炭酸水に対する三叉神経舌枝の応答は著しく低下していた。これらのことから、亜鉛欠乏による味覚異常は味細胞受容膜の障害と言うより、むしろより高次中枢での伝達・投射過程が亜鉛欠乏で影響されたと推測された。
|