研究概要 |
申請書の研究計画・方法でも述べたように、平成6年度においてはラットを用いてα-トコフェロールの立体異性体、特に2R体と2S体の臓器内分布をまず解明し、短期投与では肝臓内で2S体が2R体を上回って保持されるが、時間経過と共にこの比が逆転し2R体がより高い濃度で存在していることを突き止めた。更に、消化吸収経路を介さない尾静脈からall-rac-α-Tocopherol或いは2-ambo-α-Tocopherol,SRR-α-Tocopherolを投与した時の各異性体の挙動を解明した。この結果によれば、尾静脈から投与すると、最初はall-rac-α-Tocopherolの組成比を反映して血液中に分布していた各異性体が時間と共に、各臓器に取り込まれていくが、その際2R体が2S体よりも速やかに各臓器に移行していくことが認められた。また、肝臓でも最初2S体の存在量が高いが次第に2R体の濃度が高くなり、前述の結果と一致した。また、2-ambo-α-TocopherolやSRR-α-Tocopherolを胃から直接ラットに投与すると、いずれの場合においてもSRR-α-Tocopherolの血清、赤血球、各臓器中の濃度は肝臓を除いて極めて低く、2-ambo-α-Tocopherolを投与した場合でも同様で肝臓を除く臓器や血液中ではRRR-α-Tocopherolのみが検出され、SRR-α-Tocopherolの濃度は短時間内に殆ど消失することが確かめられた。このような結果は既に井上らが肝臓にその存在を認めたα-Tocopherol結合タンパク質がα-トコフェロール立体異性体の識別を行っている可能性を示唆するものである。このことについては、本年度検討を行う予定にしている。
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