研究概要 |
ビタミンEの同族体で最も活性の高いのはα-トコフェロールである。このα-トコフェロールの合成品には8つの同族体がある。これらの同族体の生体内での識別について、昨年度までの研究で合成のall-rac-α-トコフェロールを短期間投与すると肝臓内だけでは、2R体に比べて2S体の含量が高くなるが、長期間投与では他の臓器同様2R体の濃度が2S体より高くなることを確かめた。本年度はα-トコフェロールの小腸からの吸収時に識別が起こるか否かについて、リンパカニュレーション法と小腸吸収のモデル細胞系としてCaCo-2培養細胞を用いて検討を行った。その結果は別紙投稿論文に記載されているように、小腸吸収時には2-ambo-α-tocopherol,all-rac-α-tocopherolを投与しても経時的にリンパ液中の2R体と2S体の濃度比はほぼ1:1で変化せず、消化吸収時ににはα-トコフェロール同族体の識別は起こらないことが確かめられた。また、CaCo-2細胞株を用いた研究でも、ほぼ同様な結果が得られた。このことからα-トコフェロール立体異性体の識別は消化吸収時には起こらず、リンパ管を経て血液に合流し、肝臓に運ばれてから起こるものと考えられる。肝臓には昔よりビタミンE結合タンパク質の存在が知られている。このタンパク質は肝臓にのみ存在する。我々の最近での予備的な]研究から、この肝臓の存在する結合タンパク質がビタミンE同族体やα-トコフェロール立体異性体の識別を行い、肝臓からVLDL(超低密度リポタンパク質)の分泌時に肝臓中でVLDLへのビタミンEの輸送の際にα-トコフェロール立体異性体の識別しているものと推定している。
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